機能性を重視した審美歯科治療例
悪くなってしまった歯だけを治すのではなく、お口の中全体の機能性を重視して、全体の審美性を高めた治療例をご紹介させていただきます。
この患者様は過去に交通事故で前歯を損傷し、それから10年以上にわたって歯茎の色と歯の色を気なさっておられ、今回は自然な見た目になるセラミックの前歯を入れたいとのことでご来院されました。
まず、歯茎の色と歯の色についてですが、交通事故による外傷によって神経を除去した前歯(左上1番)には、白い樹脂が貼られた金属の被せ物が入っていました。
この金属の被せ物は治療後の時間経過とともに金属の成分が歯茎に蓄積します。そのため左上1番から2番にかけての歯茎がやや黒っぽい見た目になっていました。金属の被せ物を除去しセラミックに入れ換えることで、この黒っぽさは次第に消えていきます。
ただしこの患者様の場合は、過去の外傷によって咬み合わせのバランスが崩れたことで、前歯の並びがでこぼこしておりました。
歯並びが悪くきちんと咬んでいない歯があると、歯並びがさらに悪くなったり、知らず知らずのうちにきちんと咬んでいる歯に過大な負荷がかかってしまい、きちんと噛んでいる大切な歯の寿命を大きく縮めてしまいます。
つまり歯並びが悪いことは見た目の問題だけでなくて、歯の機能性に影響するため、歯が悪くなる原因になります。
カウンセリングを通じて患者様とコミュニケーションをとっていくなかで、悪くなった左上1番の前歯だけ治した場合の見た目がどうなるかを、樹脂の詰め物でシミュレーションをして確認して頂きました。
カウンセリングとシミュレーションを踏まえ、長期的に自然な見た目を確保するためには、悪くなった歯だけを治すのではなく「全体の機能性を確保して歯を長持ちさせることが大切である」ということを患者様に深くご理解いただくことができました。
ということで、審美性の前に機能性を確保するため、左上1番の前歯にセラミックを入れる前に、マウスピースを使った矯正を行って頂くことになりました。
半年ほどかけてマウスピース矯正で歯並びを綺麗にそろえて咬み合わせを良くしていただき、最後に左上1番の前歯にセラミックの被せ物をつけさせて頂きました。
当院に勤務している歯科技工士が職人技で造り上げたジルコニアセラミックの出来栄えは、隣り合う右上1番の天然歯と見比べても遜色ないものに仕上がっていると自負しております。
まだ歯茎の黒っぽさが完全には抜けていませんが、セラミックに入れ替えたことで次第に自然な歯茎の色に戻っていきます。
現在は定期検診で虫歯と歯周病のチェックに加え、定期的に咬み合わせに異常が出てきていないかをチェックさせていただき、審美性と機能性を保っていただいています。
Before
After